Columnマイソール協会コラム
足部のみかたシリーズ⑪ ~フォワードランジの外乱動揺について~
フォワードランジの外乱動揺について
※前回のコラム『足部のみかたシリーズ⑩ ~フォワードランジについて~』もご覧下さい。
さて、このフォワードランジでの運動観察は、少しアレンジをするとさらに足の機能を浮き彫りにできる仕組みがあります。
フォワードランジ動作では、膝の軌道がどのように軌跡を描くかを全額面で観察すると良いでしょう。
これは特に客観的に観察することはもちろんのこと、鏡の前で自らフィードバックを行い、気づきを与えることが重要です。
前述したように選手や患者などの被験者は、自分の運動イメージを説明できない方が意外と多いものです。
つまり自分の実施している片脚立位が、左右差があるのか、どちらが得意なのか、体幹は水平位に保てているのかなど、意外とわかっていないものなのです。
これが自分で把握できている方は、おそらくトレーナーがつかなくても自分で最適なトレーニングメニューを構成することができるでしょうが、実際はなかなかいないと思います。
フォワードランジの話に戻りますと、踏み込んだ下肢が内側や外側にぶれるといった軌道では、股関節機能や体幹機能を十分に発揮することができず、不安定な運動になってしまいます。
さらに、踏み込んだ位置から膝自体に外乱刺激を加えるとさらにこの動揺性が描出します。
この時の外乱刺激は、足部に着目します。
足部は特に足底圧の中心位置をどこに持っていくかをイメージするとわかりやすいです。
私の理論においては、足を四区画に分けて、荷重中心位置を変化させます。
つまり足部の内側2つ、外側2つに分けた場合に内側に誘導すれば、膝は内側に倒れるようになり、外側に誘導すれば、膝は外側に倒れるという連鎖が生じます。
このようにして、どの位置や方向に動きやすく、どの方向や位置が苦手かなどが大変わかりやすく描出できます。
フォワードランジや片脚立位から、他の動作との関連性を推測する
さて、現在までに姿勢動作観察のポイントについて、4つの項目を解説してきました。
特に単独の項目については、片脚立位とフォワードランジ動作は、とても重要な項目です。
われわれセラピスト側が観る客観的な評価の目線でいえば、どの項目にも優位性はありませんが、
大切なことは、患者や選手自身に『気付かせる』ことなのです。
この気付きの観点でいうと、立位や歩行動作は、普段から既に嫌ほど実施している動作ですので、所謂当たり前の感覚ですから、例え左右に大きく動揺が見られる歩行動作でも、その方にとっては普通なわけです。
よく外来患者さまのお話で、片方の足を引きづっているのを友人に指摘された・・・とか聞いたことはないでしょうか。
まさにこの情報は、普段意識下で動作を行っているわけではない歩行動作の異常性なんて、自覚症状はまるでありません。
逆に気付いていたら、自分でそれを修正しようとします。
話は、逸れますが、運動器疾患の多くは、自分で気付くことから改善の道へと入ります。
言葉を選びませんが、努力家はやり方さえ数回お教えすれば、外来リハに通わなくても症状が緩解するケースは多くみられるものです。
つまりは、いかに気付かせるかが重要な点なのです。
そういったことを背景に、片脚立位やフォワードランジ動作など、普段あまりやらない動作をすると意外とできないなぁと思えたりします。
またアスリートは、普段から厳しいトレーニングを積んでいるのだから、できて当然!なんて思うかもしれませんが、全くそんなことはありません。
逆に器用なアスリートは、身体機能の低下した部分をうまくごまかして動ける場合があります。
これはこれで素晴らしい能力なのですが、やはり基本的な動作である片脚立ちやフォワードランジのような前方へ踏み込む運動は、基礎的な運動機能をスクリーニングするのに大変便利でわかりやすいツールです。
例えば、片脚立位ではこれまでのコラムで述べたように、小趾側での荷重機能が重要です。
これが安定してできなければ、サイドステップ時のブレーキングや、そこからの推進・駆動する際の母趾側荷重をうまくすることができません。
また、振り向いて後方へステップしていく際や、着地の際にも母趾側荷重ばかり動員されてしまうと返って下肢の支持性が低下してしまう原因になります。
また、逆に片脚立位が小趾側荷重が強調されている場合や、小趾側荷重を飛び越えて、回外方向への不安定性が生じている場合などは、母趾側荷重が苦手なタイプといえます。
この場合は、前方へ重心移動をすることが苦手なタイプといえますので、あらゆる動作において、地面への強い推進力・制動力を得られず、効率の悪い動作要因となります。
このように、片脚立位の動作一つでもいろんな運動との関連性を推測できるのです。
理学療法士 山口剛司
足部のみかたシリーズは『足部』からご覧いただけます。