Columnマイソール協会コラム
lateral thrustを足部から考える
今回のコラムでは臨床現場でよくみられる「lateral thrust」について足部の状態も含めて考えていきましょう。
lateral thrust(以下スラスト)とは、、、
歩行の立脚期において前額面上で観察できる、膝関節の外側への動揺。
もう少し運動学的な言葉で説明すると、Initial Contact~Mid Stanceにおいて膝関節の内反(O脚)が助長してしまう現象です。
このような力学的なストレスが加わることにより、膝関節の変形の進行や、疼痛が増大してしまい歩行機能の低下に繋がってしまう可能性も十分に考えられます。
スラストが生じる原因は様々ですが、間違いなくスラストのストレスは膝関節の状態を悪化させます。
スラストが生じる瞬間は一瞬なので評価や治療介入するには難しい場面も多々あるかと思います。
スラストは荷重位でしか起こりません。
荷重をしている=地面に足が着いている
つまり、人体で唯一地面と接している足部をコントロールすることでスラストを軽減できるのではないでしょうか?
もちろん膝関節の構造的な問題が強い場合は改善が難しいこともあるでしょう。ですが、足部の評価も合わせて行い考察・介入することで良い結果に繋がる可能性は期待できます。
なぜスラストが生じてしまうのか、足部に着目して考察していきましょう。
足部回外パターンにおけるlateral thrust
一番シンプルで分かりやすいパターンになると思います。
足部が回外位にあることで上行性運動連鎖により脛骨・大腿骨は外旋位となり膝関節においては内反モーメントが加わります。
このようなパターンには外側ウェッジなどの後足部の回内方向への誘導は効果が期待できるでしょう。
しかし、臨床上で多く見られるパターンはこれではないと思います。
足部回内パターンにおけるlateral thrust
皆さんが日々、患者様と向き合う上で多く見られるのは足部が回内しているのにもかかわらず、脛骨の内弯や膝関節の相対的な外旋位によりO脚を完成させているパターンではないでしょうか?
足部の回内による上行性運動連鎖は下腿や大腿骨の内旋を生み出し、膝関節は外反(X脚)になるとされています。しかしこのような教科書で描かれたようなアライメントを呈する症例は少ない印象です。
足部(多くは後足部)の回内は代償的に下腿の外方傾斜を増強させます。下腿の外方傾斜が強くなれば膝関節に対しての内反モーメントは増強し、O脚を助長することになるでしょう。
ここでの重要ポイントは足部が相対的な回内位にあるということです。
ただ単に足部が回内しているのではなく、下腿との関係性を把握することが大事です。
下腿の外方傾斜が強くなればなるほど本来であれば足部は回外方向へ動きますが、足底面の接地面積を増やすために回内方向へ動かさざるを得なくなってくるのです。
スラストが生じてしまう原因は様々ですが、それが足部由来なのか膝関節由来なのか股関節由来なのかは評価が難しいこともあると思います。(卵が先か、にわとりが先か?的な感じですよね。笑)
しかし、冒頭でもお伝えした通りスラストはIC~MStにかけて生じる傾向が強いので後足部のアライメントは大きく関係してくるでしょう。
さて、このような足部アライメントを呈している症例に対して膝関節の内反やスラストを抑制したいがために後足部回外を制動し、回内方向への誘導をしたらどうなるでしょうか。
そうしてしまうと
足部回内はさらに強まり、下腿外方傾斜が増大していくことは簡単に予測できますよね?
膝関節が内反しているから、スラストが起きているから、という理由だけで後足部の回外を制動し回内誘導をすることはナンセンスだと思っています。
このようなアライメントの場合、それぞれの関節は代償に代償を重ねて動作を遂行していることが考えられるので、純粋に回外方向への誘導は危険です。
後足部のコントロールのポイントは「過回内の制動」です。
「回外の誘導」ではなく「過回内の制動」がポイントです!!!
mysoleを設計するにあたり、このような状況に対して後足部のPADの配置を「回外の誘導」に働かせてしまうと、膝関節の内反つまりはラテラルスラストの助長を招いてしまう可能性があるので、しっかり回内の制動をしつつも回外方向の不安定性を出さないようにすることが大切です。
このPADの配置をするだけでもスラストを制動できる症例がたくさんあります。
ぜひ、試してみてください!!!!
mysole協会 鷲﨑 翔太