Columnマイソール協会コラム
立位における上半身質量中心と足底圧中心の関係
弊社が提供するmysole®は、苦手とする足底の荷重点や身体の動きを姿勢・動作評価から導き出し、特殊なPADを使って動きを誘導することで弱点を克服していくインソールです。
mysole®は足底から荷重点を誘導することで、適切な身体運動を引き出すことに特化したインソールですが、インソールだけでは解決できないことも起きてきます。というのも、立位において、骨盤の位置や上半身の姿勢が偏移することで足底圧中心(以下COP)が容易に変化するからです。なので、脊柱の側弯の程度や円背、反り腰等、あらゆる上半身の姿勢の変化でCOPの変化が生じることも理解していく必要があります。
今回は上半身の姿勢に着目し、上半身質量中心の偏移によってCOPが変わることについて解説していきます。
立位姿勢では下図のように、重心線(青線)が身体の中心を通るのが理想と言われています。
矢状面 )耳垂–肩峰–大転子–膝蓋骨後面–外果2~3cm前部
参考書籍)山口光圀:結果の出せる整形外科理学療法-運動連鎖から全身をみる.メジカルビュー社.2009 一部改変
上半身、下半身にはそれぞれ重心位置が定められており、
上半身質量中心 : 第7〜9胸椎
下半身質量中心 : 大腿骨1/2、大腿骨近位1/3を結んだ中点
とされています。
この2つの質量中心の中点に位置するのが身体重心(第2仙骨前面辺り)です。
例えば、上半身質量中心の側方偏移がある場合、偏移側の荷重量が上がります。すると、偏移側の踵部痛や扁平足の助長、外反母趾のように疼痛や骨変形を生じやすくなります。
また、上半身質量中心の後方偏移がある場合、上写真のように円背姿勢で骨盤後傾、膝関節屈曲位では重心が後方に移ります。しかし、このままでは後ろに倒れてしまうため、この姿勢のまま足関節の背屈を強めて、前方へ重心を移動します。すると、前足部に荷重が乗り続けるため、前足部痛や外反母趾、開帳足のような症状、骨変形を伴ってしまいます。
このように上半身の姿勢が関与して、COPが偏移していることも考えられます。
上半身の姿勢の崩れは、脊柱の側弯や強直を伴う可動性の低下、椎体の変形や腹圧が高まらないことにより徐々に姿勢不良は助長されていきます。
治療の優先順位として、上半身の姿勢を改善していくことを優先すべきか、インソールで足底から荷重点のコントロールを優先すべきか。
歳を重ねるほど、長年構築されてきた姿勢戦略を読み解くことは容易ではありません。姿勢は日々の習慣で徐々に変化してくることが考えられますので、身体評価と合わせて、各々の生活習慣に着目していく必要があります。
その姿勢がどのように構築され、どのような要因で障害を伴っているかを局所だけでなく、多角的な視点で捉えるとヒントが得られるかと思います。
重心の位置を確認する際は、足部だけではなく、上半身の姿勢にも着目して評価してみてください!
理学療法士 井上雄太